超にょう力
 栞菜:「ただいまー、ねえそこでスーパーに行く途中のえりかちゃんにあっちゃった。
     今日の御飯は特製カレーだってさ!」
 早貴:「今日こそは失敗しないようにって言ってたよお、
     ……ってみんな何してるの?」

 ある日の夕方、栞菜とナッキ―が帰宅すると、キッチンでは愛理と千聖とマイが
スプーンを睨んで真剣に何かをやっていた。

 愛理:「えへへへへ、スプーン曲げ」
 マイ:「あのねえ、誰が最初にスプーン曲げられるか競争してるの」
 早貴:「……ちょっと、そんなことできる訳ないじゃん」
 千聖:「でもさあ、でもさあ、うちの中に誰か超にょう力者がいるんだよ」
 マイ:「超【能】力!!」
 千聖:「そう、その超にょう力者がいるんだって、ほら、このスプーン見てよ。
     これさっきキッチンで見つけたんだよ!!」

 千聖はグニャリとほぼ真っ二つに折れ曲がったスプーンを取り出して見せた。

 栞菜:「あ、それさあ、超能力じゃないよ。
     舞美ちゃんが手で曲げたの、こーやって力入れて」

 ……カラン!

 あ然とした表情の愛理、千聖、マイに、床に落ちたスプーンの音が響いた。

 愛理:「……でもさ、あたし給食の時間にやったら曲がったことあったよ!?
     あの時はビックリしちゃったよ!!」

 カッパの存在を信じている、超常現象大好きの愛理が言った。

 千聖:「アピってますアピってます」
 愛理:「だって本当だもん!」
 早貴:「もう、何でそんなに真剣なのよ」
 マイ:「だってねえ、先にスプーン曲げられた人がこの先一週間
     みんなのおやつ独り占めできるって決めたんだもん」
 栞菜:「アタシもやるッ!!」
 早貴:「……ちょっと、もう栞菜まで!」

  『曲がれ曲がれ曲がれ……』

 スプーンを持ち、思い思いの方法でスプーンに呪文をかけ始めた四人に
あきれてナッキ―が言った。

 早貴:「だいいちそんなやり方じゃ曲がらないよ。スプーン曲げってのは
     本来は手を使わずに、意識を曲げたい所に集中させて『曲がれ!!』って
     念じるのよ、こうやって……」
 千聖:「できる訳ないじゃんって言ってたくせに」
 愛理:「そうだよ、何でそんなやり方とか知ってるのヨ」
 早貴:「別にいいジャン!もう、こうなったらアタシがおやつ一週間分
     横取りしてやるんだから」

 こうして実は姉妹一の負けず嫌いナッキ―の闘志に火がつき、
おバカな五人の念がキッチンに響きわたった。

  『曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ曲がれ……』


 えり:「ただいまー、ごめんね遅くなって。すぐ御飯の用意するからねー」

 帰宅したえりかの声に、手にしっかりとスプーンを握り、眉間に皺を寄せた真剣な表情の
五人が振り返った。

 えり:「うっそ!あんた達そんなにアタシのカレーが待ちきれなかったの?
うっれしー!!」

早貴:栞菜:愛理:千聖:『え〜〜〜〜〜〜〜〜!?』

         おわり

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