梅の花の咲く頃に
私は必要無いんじゃないか
そんなことばかり考えていたあの頃

年末や新年の喧騒を終えた世間
我が家では未だ喧騒が続く
「千聖早く起きないと遅刻するよ」
舞美の声が響き渡る。最早恒例と化した朝の儀式
「舞。どうせ掛けていけないんだから、サングラスは置いときな」
「早貴、お弁当ちゃんと持った?」
「かんな、朝ご飯なんてガーッと流し込んじゃいな」
儀式は続く…

妹たちを送り出し一息つく舞美に声をかける
「舞美はすごいね。私なんかあの子達に何にもしてあげてないよ」
本心から出た言葉
「そんなことないよ私はえりに助けてもらってるよ」
その言葉に何か後ろめたい感情が浮き上がる私
「でも嘘なんだよ」
様々な感情が混ざり合い思わずそんな言葉を発する
「えり…」
困惑した舞美の声

「いってきます」
捨て台詞の様に呟き私は家を飛び出した


「あぁ〜あ。うちってなんて子供なんだろ」
思わず口走ったそんな言葉に過去の思い出が乗りかかる
妹たち相手にゲームでむきになり泣かせた事
千聖との勝負でみんなが千聖を勝たせようとして悔しくて泣いた事
「お姉ちゃんなのにね」
誰に聞かせるでもなくそう呟いた
いつもそうだった。
舞美は両親のいない私達を一生懸命ささえてくれる
不器用だけど大きな愛でもてなしてくれる
「ほら、いいじゃないか」とよく分からない言葉でみんなを励ましてくれる
私は何が出来てるんだろう。
分からない
分からない…


高校で舞美と顔を会わせるのが何だか辛い
今は笑って「ごめんね」って言えそうにないよ

気が付くと私はお気に入りの公園に足を向けていた
通学路とはまるで反対にある公園
私の大好きな梅の木が沢山植えられている公園
私はベンチに腰をかけ、時間のたつのも忘れずっと梅の木をみていた
「もうすぐ花が咲きそうだね」
青々と枝々に芽吹くつぼみたちに声をかけた

「えりかちゃん やっぱりここにいたね」
どの位梅の木を見つめていただろう
不意にかけられた声に我にかえる
「栞菜。どうしたの」
我ながら間抜けな返事
「どうしたのじゃないよ。舞美ちゃんに聞いたんだ」
「えりかちゃん」
「うん」
「舞美ちゃんは舞美ちゃん、えりかちゃんはえりかちゃんだよ」
「うん」
「私達みんなえりかちゃんの事大好きなんだよ」
「……。」
私はなにも答えられなかった
「一緒に帰ろ」って言ってくれた栞菜に素直に「うん」って言えなかった

「あぁ〜あ、ホント子供だな」
涙が一筋こぼれ出た


結局は私は家に帰れなかった
友人の家を渡り歩き数日を過ごした

携帯は妹たちのメールで溢れかえる
そこから伝わる優しい感情
嬉しかった
本当に嬉しかった

「ホント、だめなお姉ちゃんだね」
そんな言葉がこぼれ出た

舞美になんて言えばいいのか分からず、ただ無意味に日々を費やす

そんなとき舞美からメールが届いた

「えり元気?明日えりの大好きな公園に来てほしいな
ずっと待ってるからね とか言って(笑 」


翌日、私は戸惑いながらも公園へと足を向けた
いつも私が座るベンチには舞美が1人腰掛けていた
「……。」
かける言葉が見つからず無言のまま隣に腰を掛ける
しばしの沈黙

「綺麗だね」
不意に舞美の口から漏れた言葉に「えっ?」と返す
「梅の花だよ」
あたりを見回せばそこには満開の梅の花
「きれー」
思わずそう口ばしる
「ねぇ、えり知ってる」
舞美はえりかに優しく語りかける
「梅って、すごい強いんだよ。多少切られたぐらいじゃびくともしない」
「また、新しい枝をつけて綺麗な花を咲かせるんだよ」
「舞美…」
言葉が見つからない
「えりだって同じだよ。大好きな梅の様に強くて
いつも笑顔でみんなに元気をくれる」
「みんなえりの事大好きなんだよ」
「そうだかんな」
「うん」
「キュフフ」
いつからいたのか背後から聴こえる妹たちの肯定の声
「ほら、いいじゃないか」
お決まりになった舞美の言葉に涙混じりに
「うん」
と答えた

いつかきっと梅の木のように強くて綺麗で
みんなに笑顔をあげるそんな存在になりたい

満開の梅の花と姉妹の笑顔に包まれて
私はそう願った
C-ute 7 Sisters Log Page Project
inserted by FC2 system